3月の誕生石として広く知られるアクアマリン。実は、ブラッドストーンという、もう一つの伝統的な誕生石も存在することをご存じでしょうか。石しるべでは、この二つの石の違いを紹介します。
海の色のアクアマリンと、大地の色のブラッドストーン
アクアマリンは、海のような澄んだ水色から、春の訪れとともに穏やかな海を思わせる石として誕生石に選ばれてきました。一方のブラッドストーンは、深い緑に赤い斑点が散る石で、より古くから3月の誕生石として伝わってきた歴史を持ちます。国や時代によって、どちらを主とするかが異なります。
なぜ二つの石が並ぶのか
誕生石のリストは、20世紀にかけて複数回の改定が行われてきたため、古い伝統と新しい慣習が両方残っている月があります。3月はその代表例で、船乗りの守り石とされたアクアマリンと、キリスト教の伝承と結びつくブラッドストーンが、どちらも誕生石として伝えられています。
選び方のヒント
澄んだ水色を楽しみたいならアクアマリン、力強い色のコントラストを楽しみたいならブラッドストーンと、好みに応じて選んで構いません。
誕生石リストが定まった時期
現在使われる誕生石の基本的なリストは、1912年にアメリカ宝石商協会(現ジュエラーズ・オブ・アメリカ)が公式に定めたものが元になっています。3月に二つの石が並ぶ背景には、この公式化以前から伝わっていた古い伝統を尊重した経緯があるといわれます。
「海水」を意味する名前
アクアマリンの名は、ラテン語で「水」を意味する「アクア」と「海」を意味する「マリナ」を組み合わせた言葉に由来します。船乗りたちは、荒れた海を鎮め航海の安全を守る石として、古くからお守りに用いてきたと伝えられます。
「ドン・ペドロ・アクアマリン」という巨石
ブラジルで発見された長さ約55センチメートルにおよぶ巨大な原石から研磨された「ドン・ペドロ・アクアマリン」は、現在アメリカのスミソニアン国立自然史博物館に収蔵されている、世界最大級のカットされたアクアマリンとして知られます。
エメラルドと同じベリルの仲間
アクアマリンは、5月の誕生石であるエメラルドと同じ「緑柱石(ベリル)」という鉱物の仲間です。エメラルドは微量のクロムやバナジウムを含んで緑になり、アクアマリンは鉄を含んで水色になるという、含まれる微量成分の違いが色を分けています。
キリストの血が染めたという伝説の石
ブラッドストーンは、中世ヨーロッパのキリスト教圏で、十字架にかけられたキリストの血が緑色の石に滴り落ちて赤い斑点になったという伝説から特別視されてきました。ルネサンス期には、この物語性から印章や紋章を彫り込む「インタリオ」の素材としても好まれました。
加熱処理で洗練される青
採れたばかりのアクアマリンは緑がかった色合いを帯びていることが多く、市場に流通するもののほとんどは加熱処理によって黄色みが取り除かれ、澄んだ水色に整えられています。この処理は永久的で一般的に受け入れられているものです。
「太陽に向けると赤くなる石」という古い呼び名
ブラッドストーンは、水に浸して太陽にかざすと鏡のように反射して赤みを帯びて見えるという古代の観察から、ギリシャ語で「太陽の方向を向く」を意味する「ヘリオトロープ」とも呼ばれます。
マダガスカル・ナイジェリアも主要産地に
アクアマリンは、伝統的なブラジル産に加え、近年はマダガスカルやナイジェリア、ザンビアなど、アフリカ各地でも良質な結晶が産出するようになりました。産地ごとにわずかに色調の傾向が異なり、選ぶ楽しみが広がっています。
春の訪れを告げる二つの石の色
3月は北半球では春の始まりの月にあたり、澄んだ水色のアクアマリンは雪解けの水や春の海を、深緑に赤い斑点を散らすブラッドストーンは芽吹く大地に射す陽の光を思わせる色として、それぞれ季節の移ろいと重ねて語られてきました。同じ月の誕生石でありながら、対照的な色合いを持つ二石が並ぶ点も、この月ならではの楽しみ方につながっています。
アクアマリンの結晶が育つ場所
アクアマリンは、地下でゆっくりと冷え固まる花崗岩質のマグマの中にできる空洞(ペグマタイト)で、時間をかけて大きな結晶へと成長します。この生成環境は、同じベリル系の宝石であるモルガナイトやヘリオドールとも共通しており、色の違いは結晶に取り込まれる微量元素の違いによって生まれます。
春分と結びつけられてきた3月
3月は多くの文化圏で春分を含む月にあたり、昼と夜の長さが等しくなるこの時期は、古くから均衡や新しい始まりの象徴とされてきました。海の色と大地の色という対照的な二石が並ぶことも、季節の変わり目にふさわしい取り合わせといえるでしょう。
楽しみ方
一つの月に複数の誕生石があることを知ると、選択の幅が広がります。両方を並べて、色の対比を楽しむのもおすすめです。