7月の誕生石として知られるルビー。石しるべでは、もっとも高く評価される色合い「ピジョンブラッド(鳩の血)」と呼ばれる基準、選び方を紹介します。
「鳩の血」と呼ばれる最高級の赤
ミャンマー(ビルマ)のモゴック地方で産する、深紅でわずかに青みを帯びた最上級のルビーは「ピジョンブラッド」と讃えられてきました。厳密な科学的定義があるわけではありませんが、色の濃さと鮮やかさを兼ね備えた特別な赤として、長く珍重されてきた歴史があります。
加熱処理という一般的な慣習
ルビーは、色や透明度を整えるための加熱処理が古くから一般的に行われています。無処理で美しい発色を持つものは特に希少で、処理の有無によって評価が大きく変わります。購入時には処理の有無を確認するとよいでしょう。
選び方のヒント
硬度9とサファイアに次ぐ硬さを持ち、日常的に身につける指輪にも向いた丈夫な宝石です。色の濃さや透明度に加え、内包物の少なさも評価のポイントになります。
加熱処理以外の処理にも注意
近年は、ひびの多い低品質のルビーに鉛ガラスを浸透させて透明度を高める処理も見られます。この処理を施したものは、単純な加熱処理品に比べて耐久性が劣り、価格も大きく異なるため、購入時にはどの処理が施されているかを確認することが大切です。
「赤」を意味するラテン語が由来
ルビーの名は、ラテン語で「赤」を意味する「ルベル」に由来します。サファイアと同じ「コランダム」という鉱物の仲間のうち、微量のクロムを含んで赤く発色したものだけがルビーと呼ばれます。
実はスピネルだった「黒太子のルビー」
英国王室の戴冠用宝飾品に収められた「黒太子のルビー」は、長らくルビーと信じられてきましたが、現在では成分の異なる「スピネル」という別の鉱物であることが判明しています。中世から近代にかけて、外見の似た赤い宝石が広くひとまとめに「ルビー」と呼ばれていた歴史を物語る一例です。
星をまとう「スタールビー」
内部に含まれる針状のルチル(酸化チタン)インクルージョンが規則的に並ぶと、光を受けて六条の星形の輝き(アステリズム)が浮かび上がる「スタールビー」になります。この輝きは石を丸く磨く「カボションカット」でこそ現れる、ルビーならではの光学現象です。
ミャンマー以外の主要な産地
伝統的な最高峰の産地はミャンマーのモゴック地方ですが、近年はモザンビークやタイでも良質なルビーが産出しており、世界的な流通量を支える重要な産地になっています。
世界初の人工宝石とレーザーへの応用
1902年、フランスの化学者オーギュスト・ヴェルヌイユが、粉末を溶かして結晶化させる「ヴェルヌイユ法」により世界で初めて量産可能な合成ルビーを作り出しました。この人工結晶は宝飾用途だけでなく、1960年に発表された世界初のレーザー(ルビーレーザー)の材料としても使われ、科学技術の発展にも貢献しています。
現代を支えるミャンマー以外の産地
伝統的な最高峰の産地ミャンマーに加え、近年はモザンビークが世界のルビー供給量の多くを占めるようになり、流通するルビーの産地構成は大きく変化してきています。
硬度9を支えるコランダムの結晶構造
ルビーが持つモース硬度9という硬さは、酸化アルミニウムの原子が緻密に結びついた結晶構造によるものです。この構造の隙間にクロムが入り込むことで赤く発色しつつ、硬さそのものは損なわれないため、美しさと丈夫さを両立した宝石になっています。
夏の盛りに映える情熱の赤
7月は北半球で夏の暑さが本格化する月にあたり、ルビーの燃えるような赤色は、この季節の生命力や情熱と結びつけられて誕生石に選ばれてきました。古代インドの言い伝えでは、ルビーは内側に消えない炎を宿す石とされ、身につける者に勇気を与えると信じられてきた歴史があります。
古代インドの「宝石の王」という位置づけ
古代インドの宝石格付けの伝承では、ルビーはしばしば「宝石の王」として最上位に位置づけられてきました。サンスクリット語でルビーを意味する「ラトナラージ」は文字通り「宝石の王」を意味し、当時から特別な地位を与えられていたことがうかがえます。
夏至と重なる7月の位置づけ
7月は北半球で夏至を含む時期に近く、一年でもっとも太陽の力が強まる季節です。燃えるような赤のルビーは、この最も陽が強い時期を象徴する石として、太陽そのものの象徴と重ねて語られることもありました。
楽しみ方
燃えるような赤は、7月という夏の盛りの季節にふさわしい情熱的な色です。産地や処理の有無を知ったうえで、自分だけの一石を選んでみてください。